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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)1122号 判決 1999年6月29日

控訴人

世界基督教統一神霊協会

右代表者代表役員

石井光治

右訴訟代理人弁護士

和島登志雄

鐘築優

被控訴人

甲野花子

被控訴人

乙山松子

右両名訴訟代理人弁護士

中川和男

松岡康毅

本多久美子

北岡秀晃

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

被控訴人らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文と同旨

第二  事案の概要

一  事案の要旨

被控訴人らは、控訴人の信者らの違法は献金勧誘行為により損害を被ったとして、民法七一五条又は七〇九条に基づき、控訴人に対し、被控訴人甲野において献金額相当の二一〇万円及び弁護士費用四九万円の合計二五九万円、被控訴人乙山において受講料相当の一〇万円、献金額相当の五二〇万円及び弁護士費用一〇三万円の合計六三三万円と右各金員に対する不法行為後で本訴状送達の日の翌日である平成六年五月一七日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた。

これに対し、控訴人は、被控訴人ら主張の不法行為の成立を否認して争っている。

二  前提となる事実(末尾に証拠の記載のないものは、当事者間に争いのない事実である。)

1  控訴人は、昭和三九年に設立登記された宗教法人であり、その母体である世界基督教統一神霊協会(以下「統一協会」という。)は、文鮮明を創始者として昭和二九年に大韓民国のソウルで設立された宗教団体である。

2  被控訴人甲野は、控訴人の信者らの勧誘により、平成四年七月二四日、控訴人に対し、二一〇万円を献金した。

3  被控訴人乙山は、控訴人の信者らの勧誘により、平成五年六月二八日、東大阪カルチャーセンターに受講料一〇万円を支払い、同年七月二九日、控訴人の信者上西那美子及び山口幸子を介して、控訴人に五二〇万円を献金した(甲八、一六六、乙三三、三五、証人上西那美子、同高島正男、被控訴人乙山)。

三  当事者の主張

次に付加、訂正、削除するほか、原判決四頁八行目から同六七頁末行までのとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四二頁八行目の「被告の主張する」の次に「全国しあわせサークル連絡協議会及びその後身の信徒会と称する」を付加する。

2  同四三頁九行目の末尾に「(民法七〇九条)」を付加する。

3  同四六頁八行目の「八九教会」を「九四教会」と、同九行目の「五五教区」を「五六教区」とそれぞれ改める。

4  同四七頁一行目から同四九頁五行目までを次のとおり改める。

「昭和四六年五月に設立された株式会社ハッピーワールド(当時の商号は幸世商事株式会社、その後世界のしあわせ株式会社と変更された後、現商号となった。代表者は控訴人の信者の古田元男《以下『古田』という。》)及びその傘下に全国に設立された販売会社は、大韓民国から高麗人参茶等及び大理石商品(壺や多宝塔等)を輸入し、これを販売する収益事業を行っていたが、その後、各販売会社の傘下に都道府県単位で特約店(会社組織)が設立され、特約店の委託販売員が右商品を顧客に販売した。東京都内の特約店の日本パナックス商事株式会社は、昭和五四年に、販売の促進を図るため、全国に先駆けて委託販売員の顧客を世話(ケアー)し、顧客同士の親睦を図る目的で、顧客の親睦会や、顧客に対して統一原理を分かり易く説明するしあわせ原理を紹介するワンディ、ツーディ、フォーディ等のゼミナールを行うしあわせ会を発足させたところ、このような会が全国の特約店に広がり、昭和五七年四月、全国組織の全国しあわせ会が発足した。全国しあわせ会は、ビデオセンターを設置し、文化、教養、宗教、統一原理の勉強に使用された。全国しあわせ会は、昭和五七年八月発展的に解消し、その後身として、顧客獲得と併せて統一原理を伝えることも正式な活動とする全国しあわせサークル連絡協議会(以下『連絡協議会』ともいう。)が発足し、中央本部(事務局)及び会計巡回師室及び心霊巡回師室が設置され、古田が責任者(本部長、その後はコマンダーとよばれた。)、控訴人の信者である小柳定夫(以下『小柳』という。)が補佐役となった。連絡協議会は、ほぼ右各販売会社に対応して全国をブロック単位に分け、各都道府県単位の特約店に対応した地区を傘下とし、各地区の青年支部及び壮年婦人部のもとに右ビデオセンターが引き継がれた。このように、収益事業のために設立された前記各会社及びこれに協力するために設立された連絡協議会(その構成員には控訴人の信者でない者も含まれる。)と宗教活動のみを行う控訴人(昭和五八年から職員制度を採用し、職員と一般信者とを明確に区別した。)とは、その目的が全く異なり、古田及び小柳が控訴人の役員となったことはなく、組織及び人事面並びに会計面でも全く別個の組織であり、控訴人が右会社は勿論、連絡協議会を指揮命令、監督したことはない。

連絡協議会の地方組織が大きくなったため各地方に権限を移譲したこと及び文鮮明が信者に対して生まれ故郷に帰って氏族メシアを伝道するように説いた還故郷により故郷に帰る信者が増えたことから、各地に独立性の強い信徒会ができるようになり、連絡協議会は平成三年末に解散し、各地の信徒会が連絡協議会の活動をそのまま承継した。

被控訴人甲野に対して本件献金勧誘行為を行った信者らは奈良北信徒会に所属する者で、奈良カルチャーセンターは右信徒会が運営していたものであり、被控訴人乙山に対して本件献金勧誘行為を行った信者らは東大阪信徒会に所属する者であり、東大阪カルチャーセンターは右信徒会が運営していた。控訴人は、連絡協議会と同様に、右各信徒会とは別個の組織であり、控訴人が右各信徒会に指揮命令、監督をしたことはない。」

5  同五五頁三行目の「あるが、」の次に「献金目標額を定め、献金のためのマニュアルを作成したことはなく、」を、同八行目の「信者組織」の次に「である連絡協議会及びその後身の信徒会」をそれぞれ付加する。

6  同六三頁五行目の「被告は」から同六行目までを削除する。

7  同六四頁六行目の「ものであり、」の次に「被控訴人甲野は、献金の翌日溝口に預けた一九〇万円を同人から半年後に返してもらった際、本件献金二一〇万円の返還を求めておらず、」を付加し、同七行目の次に行を改めて次のとおり付加する。

「以上によれば、被控訴人甲野は不安を抱いて右献金をしたとは到底いえないし、控訴人の信者らが被控訴人甲野に対して暴力を行使して献金をさせたこともないから、控訴人の信者らによる本件献金勧誘行為は、宗教活動として正当なものである。」

8  同六五頁二行目の「被告は、」から同行目末尾までを削除する。

9  同六六頁五行目の末尾に続けて「そして、被控訴人乙山は、献金後に、結婚式のアルバムを上西や山口に見せている。」を付加し、同五行目の次に行を改めて、次のとおり付加する。

「以上によれば、被控訴人乙山は不安を抱いて右献金をしたとは到底いえないし、控訴人の信者らが被控訴人乙山に対して暴力を行使して献金をさせたこともないから、控訴人の信者らによる本件献金勧誘行為は、宗教活動として正当なものである。」

10  同六六頁九行目の次に行を改めて、次のとおり付加する。

「被控訴人甲野に対する本件献金勧誘行為は、奈良北信徒会が運営するビデオセンター等を使用して、同信徒会所属の控訴人の前記信者らが同信徒会の活動として行ったものであり、被控訴人乙山に対する本件献金勧誘行為は、東大阪信徒会が運営するビデオセンター等を使用して、同信徒会所属の控訴人の前記信者らが同信徒会の活動として行ったものであって、控訴人は右各献金勧誘行為に一切関与していない。」

11  同六六頁一〇行目から末行にかけての「信者らの営業活動」を「信者らの信徒会における活動」と改め、末行の「一切していない」の次に「し、前記のとおり別個の組織である信徒会に対して指揮命令、監督をすることはできない。その上、民法七一五条により使用者が責任を負うためには、使用者と被用者との間に報償関係があるだけではなく、使用者が被用者の不法行為を防止できる可能性があることを必要とすると解すべきところ、控訴人は、控訴人に対する同種の訴訟が提起され、調査するに至って、初めて信徒会による献金勧誘行為を知ったのであるから、信徒会の活動である本件各献金勧誘行為についてそのような可能性はなかった。したがって、控訴人が、本件各献金勧誘行為について民法七一五条による責任を負ういわれはない」を付加する。

12  同六七頁八行目の「同(二)の事実について、」を「同(二)の被控訴人らの主張については、観念的な存在の法人に不法行為責任の成立要件である故意過失を認めることができないから、法人である控訴人が民法七〇九条による不法行為責任を負うことはあり得ず、主張自体失当である。また、」と改め、同末行に続けて「たとえ右の者らが被控訴人らに対して不法行為を行ったとしても、そのことが控訴人の被控訴人らに対する直接の不法行為を構成することはありえない。」を付加する。

四  争点

1  控訴人の信者による被控訴人らに対する本件各献金勧誘行為は違法であるか。

2  控訴人は、控訴人の信者による被控訴人らに対する本件各献金勧誘行為について、民法七一五条又は七〇九条による不法行為責任を負うか。

3  被控訴人らの被った損害額はいくらか。

第三  争点に対する判断

一  争点1について

1  被控訴人甲野に対する本件献金勧誘行為の態様

次に付加、訂正、削除するほか、原判決八七頁七行目から同一〇六頁七行目までのとおりであるから、これを引用する。

(一) 原判決八七頁七行目の「証人宇治田」を「証人宇治田佳陽子《以下『宇治田』という。》」と改め、同八行目の「掲記のもの)」の次に「及び弁論の全趣旨」を付加し、「奈良カルチャーセンター」の次に「(その運営者は、控訴人の信者組織)」を付加する。

(二) 同八八頁三行目から四行目にかけての「奈良南教区(被告の主張によれば、奈良南信徒会)」を「控訴人の信者組織である奈良南信徒会」と、同六行目から七行目にかけての「奈良北教区(被告の主張によれば、奈良北信徒会)」を「控訴人の信者組織である奈良北信徒会」とそれぞれ改める。

(三) 同八九頁一行目の「婦人伝道の」の次に「目的は、多数の者を控訴人に入信させて献金させることであり、その」を付加する。

(四) 同九一頁八行目の「以上の方法は、」から同九行目までを次のとおり改める。

「控訴人の信者組織においては、当初は文鮮明や統一協会との関わりを明確に否定し、控訴人の信者らが、相手方の悩みを把握し、これに応じた因縁話をする等して相手方に不安感を生じさせ又は助長させ、予め相手方の財産状態を把握した上で、控訴人に対する献金を執拗に勧誘するという、右勧誘方法とほぼ共通する方法を全国的に行っていた(甲一七の2、四八ないし五四、一五六の1、2、一五七、一五八)。」

(五) 同九二頁五行目から六行目にかけての「(一、二回)」を削除する。

(六) 同九六頁二行目の「菊井」を「菊井忠司(以下「菊井」という。)」と改め、同六行目から末行までを削除する。

(七) 同一〇六頁七行目の次に行を改めて、次のとおり付加する。

「証人溝口、同竹内の各供述及び溝口(乙二九の1、2)、竹内(乙三〇)、菊井(乙四六)の各陳述書中、右認定に反する部分は、前記認定の奈良カルチャーセンターの活動内容及び前記証拠と対比して措信できず、他に右認定に反する証拠はない。」

2  被控訴人乙山に対する本件献金勧誘行為の態様

次に付加、訂正するほか、原判決一〇九頁三行目から同一二三頁三行目までのとおりであるから、これを引用する。

(一) 原判決一〇九頁三行目の「東大阪カルチャーセンター」の次に「(その運営者は控訴人の信者組織)」を付加する。

(二) 同一〇九頁五行目の「会員」を「信者」と改める。

(三) 同一一一頁六行目の「前記認定した被告において」を「前記認定のとおり控訴人の信者組織において」と改める。

(四) 同一一一頁八行目から同一一二頁七行目までを次のとおり改める。

「(三) 証人中井完(当時の東大阪カルチャーセンターの所長)、同上西の各供述及び中井完の陳述書(乙五、三七)中、右認定に反する部分は、前記認定のとおり控訴人の信者組織では全国的にほぼ共通する前記勧誘方法が行われていたこと及び前記証拠と対比して措信できない。他に右認定に抵触する証拠はない。」

(五) 同一一四頁一〇行目の「河方」を「河方トキ(以下「河方」という。)」と改める。

(六) 同一二三頁三行目の次に行を改めて、次のとおり付加する。

「証人上西の供述及び同人(乙三三)、小豆澤佳江(乙三四)、山口(乙三五)、河方(乙四七)の各陳述書中、右認定に反する部分は、前記認定の東大阪カルチャーセンターの活動内容及び前記証拠と対比して措信できず、他に右認定に反する証拠はない。」

3  被控訴人らに対する本件各献金勧誘行為の違法性

特定宗教の信者が自己の属する宗教団体に献金を勧誘する行為は、信教の自由により保障された宗教活動であって、社会通念上、その目的が正当であり、かつ、方法及び結果が相当である限り、正当な行為であって、違法ではない。しかしながら、宗教団体に対する献金勧誘行為であっても、その目的が利益獲得等の不当な目的である場合、あるいは宗教であることを秘して勧誘し、殊更に害悪を告知して相手を不安に陥れる等して相手の自由意思を制約し、相手の財産と比較して不当に高額の金員を献金させる等、その方法及び結果が社会通念上相当な範囲を超える場合には、もはや正当な行為とはいえず、違法性があるというべきである。

(一) 被控訴人甲野に対する本件献金勧誘行為の違法性

控訴人の信者らによる被控訴人甲野に対する本件献金勧誘行為は、違法であるというべきであるが、その理由は、次に訂正するほか、原判決一〇六頁九行目から同一〇八頁二行目までのとおりであるから、これを引用する。

(1) 原判決一〇六頁九行目から同末行の「すると、」までを「以上認定の事実によれば、被控訴人甲野に対する控訴人の信者らによる本件献金勧誘行為には、」と改める。

(2) 同一〇七頁九行目の「マニュアルに沿った」を「多数の者に対する控訴人への献金勧誘と同様の」と改める。

(3) 同一〇八頁一行目の「被告の」から同二行目までを次のとおり改める。

「被控訴人甲野に対する控訴人の信者らによる本件献金勧誘行為は、奈良カルチャーセンターを運営する控訴人の信者組織の活動として、組織的な献金勧誘行為の一環としてなされたものであり、その目的、手段及び結果は社会通念上相当な範囲を超えているというべきであるから、控訴人の信者らの右行為には違法性があるといわなければならない。

控訴人の信者らによる右献金勧誘行為には違法性がないとの控訴人の主張は、その前提とする事実が前記認定と異なるものであるから、採用することはできない。」

(二) 被控訴人乙山に対する本件献金勧誘行為の違法性

控訴人の信者らによる被控訴人乙山に対する本件献金勧誘行為も、違法であるというべきであるが、その理由は、次に訂正するほか、原判決一二三頁五行目から同一二四頁五行目までのとおりであるから、これを引用する。

(1) 原判決一二三頁五行目から同七行目の「すると、」までを「以上認定の事実によれば、被控訴人乙山に対する控訴人の信者らによる本件献金勧誘行為には、」と改める。

(2) 同一二三頁一〇行目の「禁じられていること」の次に「、東大阪カルチャーセンターにおいて行われた多数の者に対する控訴人への献金勧誘と同様の方法であること」を付加する。

(3) 同一二三頁末行の「原告乙山」から同一二四頁一行目までを次のとおり改める。

「被控訴人乙山に対する控訴人の信者らによる本件献金勧誘行為は、東大阪カルチャーセンターを運営する控訴人の信者組織の活動として、組織的な献金勧誘行為の一環としてなされたものであり、その目的、手段及び結果は社会通念上相当な範囲を超えているというべきであるから、控訴人の信者らの右行為には違法性があるといわなければならない。

控訴人の信者らによる右献金勧誘行為には違法性がないとの控訴人の主張は、その前提とする事実が前記認定と異なるものであるから、採用することはできない。」

二  争点2について

宗教法人の信者が不法行為により他人に損害を被らせた場合に、その宗教法人は、信者との間に雇用等の契約関係がなくとも、実質的な指揮監督関係があり、かつその不法行為が宗教法人の宗教的活動等の事業の執行についてなされたものであるときは、民法七一五条の使用者責任を負うというべきである。

これにより本件を検討するに、控訴人の信者による被控訴人らに対する本件各献金勧誘行為は、前記のとおり、控訴人の信者組織の活動としてなされたものである。しかし、宗教法人は、その信者組織がその宗教法人の教義とは異質の理念に基づいて活動しているなどの特段の事情のない限り、その信者組織に対して、実質的な指揮監督関係を有していると認めるのが相当であるところ、本件においては、全証拠によるも右特段の事情を認めることはできない。かえって、控訴人の信者組織は控訴人の信者を獲得するための活動をしていること(前記認定)、控訴人の奈良教会長であった米田好寛及び東大阪教会長であった高島正男は、その前に控訴人の信者組織の職員であり(証人米田好寛、同高島正男)、このことからすると控訴人の職員と控訴人の信者組織とは人的交流があると認められること及び控訴人の信者組織の構成員である控訴人の信者らは控訴人の教義の実践として控訴人の信者組織の活動に従事していたこと(前記証拠)からすれば、控訴人の信者組織と控訴人とは実質的に一体の関係にあると推認される。したがって、控訴人と本件各献金勧誘行為をした控訴人の信者らとの間には、実質的な指揮監督関係があったというべきである。そして、本件各献金は、前記認定のとおり、控訴人に対してなされたものであるから、本件各献金勧誘行為は、控訴人の宗教活動に密接な関係があり、かつ控訴人はこれにより利益を得ているものといえるから、控訴人の事業の執行についてなされたものといわなければならない。そうであれば、控訴人は、民法七一五条に基づき、被控訴人らに対し、同人らが本件各献金勧誘行為によって被った損害を賠償すべき責任があるといわなければならない。

控訴人は、控訴人の信者組織は控訴人とは別個の組織であって、右組織に対して指揮監督関係はなく、その不法行為を防止する可能性はないから、民法七一五条による責任を負わないと主張し、証人岡村信男、同中井完、同高島正男、小柳定夫の陳述書(乙四八)等の控訴人提出の証拠中には、控訴人の右主張に沿う供述及び供述記載部分があるが、右説示に照らし採用できない。

三  争点3について

1  被控訴人甲野の損害

合計二三五万円

原判決一〇八頁四行目から同九行目までのとおりであるから、これを引用する。

2  被控訴人乙山の損害

合計五八五万円

原判決一二四頁七行目から同一二五頁二行目までのとおりであるから、これを引用する。

四  結論

以上によれば、控訴人は、被控訴人甲野に対し右損害二三五万円、被控訴人乙山に対し右損害五八五万円及び右各金員に対する不法行為後で本訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな平成六年五月一七日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

そうすると、被控訴人らの本訴請求は、右認定の範囲で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。よって、これと同旨の原判決は相当で、控訴人の本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官武田多喜子 裁判官正木きよみ 裁判官礒尾正)

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